コロナと空の旅!赤字続きの航空業界の今後は?武士の商法にならず新たな事業展開で黒字となるか|ANAのLCC新会社にも期待
くさいセリフですが、航空業界は人と荷物を運ぶだけでなく夢を運ぶ仕事でもあります。
新婚旅行や卒業旅行、初めての海外旅行…。
数えきれない旅人の一生の思い出の中に、安全に飛行したパイロットや笑顔で尽くしてくれたキャビンアテンダントたち、また陰で整備に奔走した整備士たちの力があったはずです。
この厳しい状況を乗り越えて、企業と共に再び活躍されることを期待しています。
膨大に膨れる赤字
■ もくじ ■
ANA(全日本空輸)の赤字は過去最大の5100億円となるとのこと。
JAL(日本航空)も2000億円以上の赤字が予想されているので、航空業界にとっては相当厳しい現状と言わなければなりません。
とはいえ、万が一このどちらかが存在しなくなってしまうとすれば日本のフラッグキャリアが1社となり、価格競争やその他の点において不都合が出てくることになります。
例えるなら電話会社がNTTだけだったような時代に戻ることにもなりかねません。
となると、顧客も必ず影響を受けることになります。
加えて従業員たちも路頭に迷うことに…
主要フラッグキャリアが1社に?
※通常は、国を代表するフラッグ・キャリアは1国につき1社(たいていは国営か半民営会社)ですが、現在の日本の航空業界の場合はANAとJALの2社が大手航空会社として肩を並べているので、ここではあえて2社ともフラッグキャリアであると表現しています。
旅行ファンとしては、両社とも持ちこたえて欲しいところです。
今後の経営の立て直しについて幾つかの打開案が出されていて、むしろ旅行者としては楽しみにもできそうなものもあります。
全日空を例に、今後の展開を予想してみましょう。
はたして、コロナ禍が過ぎた後の航空業界はどうなっているのか…。
ANAのコロナ禍からの打開案
ちなみにANAの現在の株価は2290円(2020年10月27日現在)
コロナの出現前と比べると1500円程度も落ち込んでいます。
2018年では4700円という時期もあったので半分になってしまっています。
今後の経営方針は
まずは人件費の削減のための措置です。
希望退職者を募集し、新規採用も中止しなるべく人員を減らす方向にしてはいるものの人件費の赤字は追いつかない。
国際線の9割が飛べない現状の中、CA(客室乗務員)やパイロットも含めて自宅待機している従業員が相当な数に上っています。
そうした働く場のない人員を他社へ出向させることにより、解雇せずにコロナショック終息まで持ちこたえることを目指すとしています。
また、飛行機の機体数の削減やCAの副業の許可も行われます。
これによって自宅待機が多くなって収入が減ったキャビンアテンダントも、アルバイトして副収入を得ることが可能になっています。
もしかすると、これから利用するファミレスやコンビニでレジをしている女性が全日空のCAだという可能性もありますよね。
接客やマナーは超一流(しかも美人)でしょうから、企業側も喜んで採用するはずです。
ただし、元々の全日空の給料水準はかなり高めです。
ANAの給料
ANAの社員の平均年収は800万円弱といわれています。
若手の30歳前後の社員の月収はなんと40万円前後、
中堅どころの40代になると50万円以上になるそうです。
一般的な職業と比べると、高給だと思います。
ということはそれに見合った生活をしてきたわけで、アパートの家賃や食費や携帯料金の支払いなど、年収に応じた暮らしをしてきたことでしょう。
報道により、現在はコロナショックのための自宅待機で給料が半分に減ったという声もありますが、仮に40万円の月給から半分に減ってたとしても20万円です。
同じ年代でその月収か、それ以下で生活している人は多いはず。
今までの大手航空会社の賃金で働いてきた彼ら彼女らが、街で時給1000円くらいのアルバイトをすることに耐えられるかどうか…。
適応能力の高い新人世代の20代であればすぐ新しい仕事を覚えるかもしれませんが、30代40代になってレジ作業や運送業務をイチから覚えるのは大変。
加えて、仮に時給1000円で月に50時間働いても50000円です。
もちろん副収入がないよりはマシですが、終わりの見えないコロナ禍でこれからも生活していけるのかどうかが心配になります。
くれぐれも自暴自棄になって、おかしな副業に手を出さないようにと願います。
対策
しばらくの間は、収入に見合った生活にするといいかもしれません。
例えばコロナ禍が終わるまでは賃貸料金の安いアパートに引っ越すように斡旋したり、引っ越しのための補助金を出すなどすれば毎月の出費はかなり抑えられます。
給料が大幅に減っても、これまでの生活水準を維持していては持ちこたえることが困難であることは目に見えていますから、航空業界が立ち直って収入が元に戻るまで、なんとか耐え抜いてほしいものです。
新しい格安航空会社の立ち上げ
この方針にはかなり興味があります。
ANAの参加の会社を母体にして低コストの新たなLCC(格安航空会社)を作るとのことで、実現すれば全日空系列のノウハウが生かされた新しい活路が見られるかもしれません。
もちろんフルサービスのレガシーキャリアもいいんですが、何しろ価格が高い。
その点、料金を抑えた格安航空会社が増えるのは大歓迎です。
大手の「高級な」航空会社を残しつつ、より気軽に空の旅ができる選択肢を増やしてほしいと思います。
特に新会社ではアジアやオーストラリアへの就航を視野に入れているそうなので、東南アジアへの旅行記を主に扱っている当サイトでは関わることも多いかもしれません。
コロナ禍が終息すれば、今のところ旅行に出ることを断念している旅行者たちが堰を切ったように、どっと海外旅行に出始めるはずです。
これには大いに期待したいと思います。
新事業の開拓と武士の商法
航空業以外の新しい事業を展開することも打ち出されています。
つまり、飛べなくても収益を出せる取り組みを始めるということですね。
この発想は海外でも同じで、例えばシンガポール航空やタイ航空では機体の中でレストランを営業する試みが行なわれています。
ANAでも「飛ぶ」以外の事業展開を狙うとのこと。
ただし僕には、明治維新の武士の商法とならないかという心配もあります。
かつて日本で侍が時代の移り変わりとともに新たな職を求めて慣れない仕事に手を付けた結果、全てを失ってしまった…。という歴史の事例。
新しいことにチャレンジすることは素晴らしいことです。
ただし、それは甘いことではありません。
通常であれば十分な時間をかけ、計画を練ったうえで参入する畑違いの新事業。
今回は赤字の打開案としてやむにやまれずに飛び込む形なので、間違った方向に転んでしまわないか…。
ただただ、それが不安で。
今後の1年間が勝負
先の見えないコロナショックですが、終わらないはずはありません。
せっかく経験豊富なパイロット、洗練されたサービスを提供できるキャビンアテンダント、能力値の高い整備士がいるのですから1年は耐えて欲しい。
手離した航空機材は後日でも何とかなるでしょうが、人材は宝です。
例えばツイッターにもその宝が紹介されることがあります。
今回はANAを念頭に置いて記事を書きましたが、JALも同じです。
中小企業ならすでに倒れているであろう程、航空会社にとっては極めて困難な時期ではありますが、素晴らしい人材を手放すことなく乗り越えられることを願っています。
この記事を読んでおられる方の中には、航空業界に携わっておられる方もいらっしゃることでしょう。
最後に、旅人と共に夢を運んでくれた航空業界の皆様に敬意を表したいと思います。
また、何かお力になれることがあれば何なりとご遠慮なくご連絡いただければと思っています。
今は耐え時です。
必ず嵐は過ぎます。
ポリフェノール