コロナショックで潰れる会社と生き残る自浄作用のある企業!国営のタイ国際航空の破産の原因から見る強い企業に必要な資質とは
中国の国有自動車会社の破産など「国営会社は潰れない」という神話がコロナショック下で次々に崩壊している。
東南アジア旅行でよく搭乗するタイ国際航空も2020年5月に破綻した。この世界有数の航空会社の経営破綻の真の原因は、どの企業にも少なからず潜んでいそうな内容だ。
航空会社だけに、コロナ禍で国際便の飛行機が飛ばせず経営不振に…というと聞こえはいいが、じつは倒産のリスクはコロナ前からもずっと抱え続けてきた。
日本でもコロナ倒産するケースはあるが、順調な経営を続けてきたクリーンな会社が破綻するのではなく、サーカスの綱渡り状態だった企業が力尽きて破綻することが多い。
タイ国際航空も国営企業だけに官僚の天下りをはじめ、社内不正、業者との癒着と巨額の賄賂、労働組合との折り合いの悪さによって膨らんだ経営不振に、コロナウイルスの流行がとどめを刺した格好となる。
そこに自浄能力は皆無だった。
タイ国際航空の破産の原因
■ もくじ ■
どの企業にも陥る危険はあるものの、日本ではありえない、そのまま小説にできそうな規模での暗い実態があった。
破綻したタイ国際航空が抱えていた闇とは一体…
タイ国際航空への官僚の天下りと賄賂
日本の企業内でも監督省庁からの天下りが注目を集めることがある。官僚は退職後、天下り先で役員の椅子に座っているだけで高額の年収と退職金が得られ、受け入れ企業ではそのパイプによって国から便宜を図ってもらえるという図式だ。
海外の国営企業でも基本は同じだが、さらに根は深い。超がつくようなタテ社会で上下関係が厳しく、上司の人間の意向や血筋で、出世も左遷も決まることが多い。
タイ国際航空も国からの天下りが役員の椅子を独占し、賄賂を受け取っているという黒い噂が絶えないし、報道も多数ある。タイ航空が拠点とするスワンナプーム国際空港も敷地面積が成田空港の約3倍という巨大建造物だ。動く金も多い。官僚たちが引退後、航空会社や空港に関連する空の業界の利権によって甘い汁を吸い上げようとしてもおかしくはない。
タイの賄賂文化
日本では政治家や公務員、会社役員の贈賄疑惑はスキャンダル化するが、タイではワイロは一般的に通用する常套手段として成り立っている。例えば、警官に止められ無免許の場合でも日本円で数千円くらいの賄賂を出せば見逃してくれ、おとがめなしの国だ。上層部もそれは黙認しているようで、麻薬がらみの事件や傷害など、悪質な犯罪でなければ金が解決することが多い。逆に言えば、現場の警官の裁量で小さな事件はもみ消すことができるので柔軟な動きがとりやすい。
日本の警察は110番通報があれば必ず急行しなければならないし、小さな事件でも被害届を出されれば受理せざるをえず、冷静に考えるとばかばかしいような問題や、当たり屋などの明らかに「自称被害者」が金目当てにでっち上げたような事件にも真面目に対処しなければならない。
東南アジア諸国では、賄賂や飲み屋街から用心棒代を受け取る汚職警官もいる半面で、現場の警官の裁量でおかしな事件を黙殺することもできるので、ある意味では良い釣り合いが保たれているといってもよいだろう。
とはいえ、航空会社に対する賄賂は数十億ともいわれる巨額のもので、当然その金額を上回る見返りがあっただろう。
ということは、部品供給会社が公平に価格競争していれば失われなかったであろう会社の金銭が出ていき、天下り役員などにその一部が還元されたということになる。
どの会社でも幾らかはありそうな事例だが、なにせ桁が違う。氷山の一角である、バレて表面化した賄賂でさえそうなのだから、水面下の動きはさらに過激なのかもしれない。
タイ国際航空の社内での不正
海外のニュース記事によると、タイ国際航空の前会長のワロップ氏は2009年に日本に旅行に来た帰りの成田発の飛行機で、390kgの荷物を強制的に半額で運ばせたことが明るみに出て、従業員からパッシングを受け2010年に辞任。最近2年の禁錮刑の実刑判決を受けて服役している。(ちなみにタイの元観光庁長官も収賄で50年の禁錮刑を受けており、いかにタイで賄賂が蔓延しているかが分かる)
さて、重罪でもないのに10年の期間を経てからの起訴と判決が出たことには、なにやら政治的な臭いがプンプンするものの、会社のトップからそんな不正を堂々と行っていたことから、内部の様子を察することができるのではないだろうか。
偽の死亡給付金からありえない残業代まで
例えば、タイ国際航空の従業員が、自分が死んだことにして死亡届を偽造して提出し、そのまま働いていたというケースや、ありえない残業代の請求をしていた事例がある。なんと自分の年収の3倍の金額、日数にして400日以上を残業代として請求していたというから驚きだ。請求する側もすごいが、受理して支払う方もある意味凄いと思わないだろうか。
そういう長い社内の事情があるのでタイ財務省もさじを投げ、一度リセットさせることにしたのではないだろうか。
むしろ経営破綻でホワイトな民間企業に再建を期待
こういった組織は経営再建と言ったところで、大幅に内部の人間、それも上層部の意思決定レベルに巣くっている役員たちを総入れ替えしなければ変わることはないだろう。
タイ国際航空も、コロナの影響で破産したことにより、いい意味で生まれ変わるチャンスかもしれない。腐敗した大組織でも真面目に働く大部分の末端の従業員はたまったものではない。
日本でもこうした企業は大なり小なりあるのではないだろうか。政治家・官僚の接待や賄賂による企業との癒着、天下りによる利権の確保。不当な手当の請求。領収書の水増しもしくは架空請求。取り上げればきりがないくらいだ。
コロナ禍での倒産はこれからも増えていくと予想されているが、「憎まれっ子、世にはばかる」ではなく、不正な裏技を使わずに真っ当に働いてきた会社が生き残ることを願いたい。
タイは観光や第二の人生のための移住には最高の国だ。国の組織や企業としてさらにクリーンになりコロナショックが終われば、世界中から再び観光客が押し寄せるようになるだろう。
あいみょんの「憎まれっ子世に憚る」
蛇足だが、僕の好きなあいみょんの2015年のアルバムに「憎まれっ子世に憚る」がある。
どうせ死ぬなら・19歳になりたくない・好きって言ってよ・泥だんごの天才いたよね・おっぱい・私に彼氏ができない理由・ほろ酔い、が収録されている。
爆発的に流行る前のインディーズ時代の、素朴なあいみょんの個性的で人間臭い歌詞と曲から成っている。いちど聞いてみてはいかがだろうか。
どうせ死ぬなら、派手に粋に
どうせ死ぬなら、ダメもとで告白もする
どうせ死ぬなら、死んでしまうなら(略)
どうせ死ぬなら、二度寝で死にたいわ
欲を言えば父ちゃんと母ちゃんに挟まれて
誰かを愛した証を私の胸に貼って
よくできましたと手を添えて
あいみょん『どうせ死ぬなら』より